「もっと絵本読んでー!今日!今日読んで欲しいの!」と娘の癇癪が始まった。
今日は遅くなったので2冊までと約束してたのに…
もう眠る時間なのに…
困ったな。
「もうお外は真っ暗、お化けや鬼が来るかも、早く寝よう!」
そう言って渋々読んだ2冊の絵本を片付けさせる。
さぁ、電気を消すぞと言う段階になっても「もっと読みたかった」とまだ泣きながら訴えてくる。
あぁ、眠いんだな、疲れているんだなと気持ちに余裕がある私は思う。さりげなく手を握るとポカポカだ。
やっぱり眠いんだ。
ちなみに余裕がない時は、腰に手を当て低ーい声で「さっき2冊までって約束したでしょー!」と声を荒げることになるから、今日の私はやっぱりゆとりがあったらしい。
こういう癇癪モードの娘には、親切丁寧に説明してもなかなか届かないので、「そうだね。読みたかったね」と言いながら、問答無用で電気を消す。
娘は布団に入っても、「まだ読みたかったんだよ」と訴えてくるので、娘をぎゅっと抱きしめて、作戦開始です。
***
昔々、アキちゃん(娘の名前)という可愛い可愛い女の子がいました。
アキちゃんはいいました。
「私全然眠くなんかないわ。だからもっと絵本を読みたいの」お母さんは言います。
「もう寝る時間ですよ。お外には鬼がいて、アキちゃんがちゃんと眠っているか見ていますよ」
アキちゃんとお母さんはベッドに入りました。
真っ暗な部屋の中でアキちゃんは急に寒くなって怖くなりました。
もしかしたら、鬼がやってきたのかもしれない。
隣のお母さんはもう眠っています。
アキちゃんは怖くなってお母さんにぎゅーっと抱きつきました。
お母さんはポカポカ暖かくて、気持ちがよくて、ついつい目を瞑りました。
目を瞑るとそこには、太陽がキラキラ輝いて、赤やピンクや黄色の花が咲き乱れる綺麗な場所でした。
遠くから羽の生えた赤ちゃんが飛んできます。
「あなたはだぁれ?」アキちゃんが尋ねると赤ちゃんは天使だと言いました。
「ボクはよくいい子に寝ている子の夢に遊びに行くんだよ。さぁ、一緒に散歩に出かけよう!」
天使はアキちゃんに魔法をかけてくれました。
アキちゃんの背中にも羽が生えて空を飛べるようになりました。
パタパタパタ。
羽を動かし、天使について空へ飛び上がりました。
「わぁ!なんて綺麗なの」
お花畑を見下ろして言いました。
パタパタパタ。
今度は海に出ました。海はキラキラ輝いてとても綺麗でした。パタパタパタ。
山へもやってきました。なんて大きな山だろうとびっくりしました。
パタパタパタ。
「次はどこ行くの? 海も山も素敵だったけど、私何だか疲れちゃった。それに……お母さんに会いたいな」
そう言うと天使は私を元の花畑まで送ってくれました。「ありがとう。天使さん。またね!」そう言って手を振ると明るい光が差しました。
「あれ?」
気づけばそこはベッドの中。もう外は明るい光に満ちています。
「なんだ。いつの間にか眠っちゃってたみたい」
アキちゃんは言いました。
ちゃんちゃん。
***
そんな即興物語を語ると娘が「アキもいつもいつの間にか眠っちゃうんだよ」と納得したように言った。
即興で作った物語。オチも何もない話。
だけど娘のもっと読みたいという欲は満たせたよう。
「そうだね。今日は眠ったら天使と散歩に行けるかもしれないね。天使にあったらママにも教えてね」
そう会話して3分も経たないうちに娘は夢の中へ旅立って行きました。
これで本当に娘の言うとおり絵本を読んでいたら、眠くて機嫌を悪くしながらもう一冊、もう一冊と誰も得しない時間が流れたはずなので、今回は私の大勝利。
わかってはいるんだけど、余裕って、心のゆとりって大事。
ゆとりがないと些細なことが大事故になったりするし、逆にゆとりがあれば和やかに解決する。
ゆとりが笑顔を生み、笑顔がゆとりをうみ、それが巡り巡って平和な日常になる気がするのだけど、未熟者の私の日常はなかなか余裕がない。
余裕のある暮らし…したいなぁ。
ちなみに夫に「こんな話を娘に話したらすぐに寝たよ〜」と話したところ、「『ちゃんちゃん』言えばオーケーなやつ!」と言われました。
たしかにそうなんだけど!