幸せな本を見つけました。
雑誌も発行している暮らしの手帖社の連載エッセイを集めたもの。
知ってらっしゃる人も多いかもしれません。
私はというと、今まで読んでいた雑誌は、viviやSweet、Oggi、VERY、CREA、美的などファッション雑誌ばかり。
後は歯医者さんに置いてあるオレンジページかレタスクラブ。
だからいまだ暮しの手帖社の雑誌は読んだことがなく、全く未知の世界でした。
その本はいつも行く図書館の、いつも必ずチェックする棚にありました。
いつも見ているのに今まではなかった…もしかしたら見逃していたその本。
その名も「すてきなあなたに」
名前に惹かれて手に取ってみると、なんと1969年から連載されているエッセイのよう。
69年というと私が生まれる20年近く前ですから、私と著者の方とは母と子、いや祖母と子ほどの年の差であろうと思われます。
エッセイには、日々の暮らしの中で素敵だなと思った、感じた出来事を綴られているのですが、私とは生きた時代も全く異なるであろうその方の「素敵だな」と思うピントが、残り僅かな平成を生きる私にも「すてき」と思わせてくれる。
そんな不思議な、柔らかいエッセイでした。
実用書のように学ばなければ!という意気込みも、小説のように一気に読んでこのドキドキを収めたい!という気持ちもなく、紅茶を一緒に、夜寝る前に、ちょっとした待ち時間に、そんな隙間の時間に読むとふっと忙しくてぎすぎすしてた心も収まる、ゆったりした気分になれるそんな文章です。
例えば、皆が楽しみにしているおやつ時うっかりお菓子を買い忘れて、何か家にあるもので作れないかと頭をフル回転してホットケーキをおやつ時に出した。
そしたら3時から4時までとワイワイおやつは続き、出来合いのケーキより話が弾んだ…とか。
久々に会った友人が一段とおしゃれに見えて何かと思ったらネイルをしているからだった。
素敵だったので自分もネイルしてみると、服もおしゃれしようかなという心が出てきて、とても心がうれしくなった…とか。
そういう日常のちょっとしたうれしいこと、素敵だなぁと思ったこと、感心したことなどが満載です。
時代が違えど、手作りおやつの時の方がなんだか話が盛り上がったり、ネイルするだけでウキウキしたりするのは私も経験がある話。
わかるわかる!と共感したり、確かにそういう習慣も素敵ねと真似してみたいと思ったり。
こういう日常の小さいことを楽しめること、大事にすることがきっと幸せな人なんだと思う。
日常で出会う人々のさりげない気配りや素敵なこと。
忙しくしてたり、こころが暗くふさいでしまっていると、そんなこと一切気が付かずに過ごしてしまって、むしろ嫌なことばかり目に付くけれど、ゆったり「それ素敵ね、これおしゃれね」といい言葉ばっかり使っていると、自然と嫌なところより素敵なことばかり目につくようになる。
実の母は、モノをたくさん持って、人付き合いもたくさんで、いつも周りのあれこれに振り回されて大変。
時にはそんなこんながストレスになっている様子を見ても、母のようにはなるまいと反面教師のように思っていた。
嫌なところばかり目についていたのだ。
でも、そんな母も私と同じでティータイムが好きで、忙しい毎日でも休日の午後をゆったり過ごすのが好きだった。
何にも目新しいものがなくても、二人で家の広告を見るたびに「もしこの家に住むなら…テーブルはここよね」と引っ越しの妄想をして楽しんだり、エッセンシャルオイルを暮らしにとりいれたのも母だった。
受け止める側(私)がゆったりと気持ちに余裕があれば、母は母なりに暮らしを楽しんで、この本に出てくる幾人もの素敵な人と同じように、出会って楽しい素敵な人だったのだと思えるが、忙しい時の私は、効率的でないとか今の時代にそぐわないとかで反発ばかり。
そんな反抗心たっぷりの私の子供じみた心もほぐしてくれたそんな本でした。
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母のみならず、「つけたらぱっと顔色が明るくなっていいでしょ」とピンクのマフラーをくれた義母、孫の節句の時期には兜柄の立派な刺繍を額に入れてプレゼントした祖母、結婚する時「心にゆとりができるから安くても、1輪でもいいから花を飾りなさい」といった叔母。
意外にも素敵な人は案外周りにいるようです。
本の初めにこんなことが書いてありました。
あなたがすてきだから、すてきなあなただから、
でなければつい見落としてしまいそうな、ささやかな、
それでいて心にしみてくる、いくつかのことが
わかっていただけるとして、そんな貢です。
これは宣伝文句として書かれた文章らしいのですが、この本を手に取って幸せな気分になった私もちょっとは「すてきなあなたに」近づいているでしょうか。
母や義母や祖母や叔母や、本に出てきた多くの人々のようにすてきなあなたになりたいものです。