先日読んだ『大人の上品美爪塾』にこんな言葉が載っていました。
その言葉を読んだ時、正に簡素な暮らしで日々感じている幸福感ってこういうことなのかも、私がせっせとモノと向き合い、習慣と向き合い、あれこれ試行錯誤して家を作ってきたのは、こういう幸福を味わいたかったからなのだと。
そうズバッと私の心に刺さりました。
かつて某新聞に、放送作家の小山薫堂氏のこんな言葉が載っていたのを思い出します。「朝、ベッドから起きてトイレに入ったとき、いつもトイレがピカピカになっている。清潔な匂いのするタオルで体を拭く。完璧な焦げ目のつくトースターで毎朝パンが焼ける。使うたびにいいなぁと思う靴ベラを使って、家を出る。上質な暮らしとは、こういう"プチハッピーのミルフィーユ”だと思うのです。」
『大人の上品美爪塾』
『プチハッピーのミルフィーユ』とはいい言葉だなぁ。
本当にそう。何か1つだけでは幸せじゃない。
宝くじに当たるとかそういう大きな幸せを得たところで、その一瞬はとても幸せだし、なんでも買えるけれど、次はあれ買おう、次はあそこに行こう、そんな欲望は果てしなくて、いつかはたと幸せを感じなくなる。
そんな何百人、何億人に一人しか手に入れられないようなビッグなハッピーではなく、毎日健康で、美味しいご飯が食べられて、清潔で着心地の良い服を着て、ちゃんと眠る時間と場所があって、安心して帰れる場所がある。
そんな言葉で書くと当たり前のような、衣、食、住の環境が上質なのだ。
私も簡素な暮らしを目指す中で、プチハッピーを少しずつ積み重ねるようにモノや体のケアをしたり、選別したりする。
実は・・・この3月は、ドキドキハラハラななんだか落ち着かないそんな気分でした。
というのも夫の仕事は転勤ありで、３月は転勤があるのか、ないのか、あるならばどこなのかぎりぎりまでわからず、漠然とした不安が募っていたのです。
それはどこにも行きたくない！あそこにだけは行きたくない！ということではなく、いつどこに行くかわからないという先の見えない感じがちょっぴり不安なわけです。
プチハッピーのために１つずつモノを買い足したり、手放したりして「暮らし」を１つずつ作り上げる。
けれど、次の地に行けばそれはいったんリセットされるわけで、０にはならずともまた「暮らし」を積み上げていかなければならないその労力は途方もない。
あまり部屋の大きさ間取りが変わらなければ、外環境になれるだけでよいでしょうが、部屋が極端に大きく、小さくなれば…家の中も大きく変わらねばならないでしょう。
そしてそれが日本以外なら？
もう１８０度変わることは必須。
そんな不安を解消するかのようにこの３月夫も私も断捨離に励みました。
やはり考えても、不安に思っていても、結論は同じ。
小さな暮らしの方が、何処に行こうと実践できる可能性が高い。
あの家電がないと掃除ができない、この便利グッズを使わないと収納できない、この簡単調味料がないと料理が作れない。
そんな商品を買うことばかりで暮らしを回していたら、いまよりうーんと狭い家になった時その便利家電は置けないかもしれない。
日本のはるか遠くに住むことになった時、その調味料は売ってないかもしれない。
でも、なるべく暮らしを小さくしていくと残るのは意外とどこにでも手に入る様なものだったり、モノが少ないので、たとえ小さい家にも、たとえ日本からはるか遠くの家にも持っていくことができたりする。
だから、私が「プチハッピーのミルフィーユ」のような生活をするのであれば、簡素な暮らしはマストなのである。
幸い今回は転居しなくても大丈夫そうだが、毎年３月はそわそわしそう。
そんなソワソワを最小限に抑えるためにも、いざその時になって困らないためにも、簡素な暮らしを目指して暮らしを小さくする。
それが目標です。
日本はとっても豊かな国。
衣、食、住があるのが当たり前すぎて、1シーズンしか着ない服をたくさん買って、流行についていくのに疲れてしまって、便利なレトルト、インスタント、外食、中食に頼って、太りすぎたり、栄養が偏り過ぎたり、生活習慣病も増大。
住居だって、新しいものがどんどん増えるから、管理が行き届かなくなって、掃除も大変。
忙しいから、便利なものを買って、それらを買うためにもっともっと忙しく働いて。
豊かすぎて、プチハッピーじゃ物足りなくなってしまった模様。
その結果、上質からどんどん遠ざかる。
ここ数年の断捨離ブーム、ミニマルブームはそんな豊かすぎてビッグなハッピーを求めすぎてきりがないことに人々が気付き始め、景気もパッとよくなるわけでもなく、そろそろ現実的に、地に足着けて、でも「ハッピーに」生きていこうとした結果なのではないかな。
